社会保険適用拡大の方向性-社会保険審議会

2025年1月

社会保険の適用拡大について、厚労省は社会保障審議会で検討しており、その方向性として以下の案がでています。(2024/12時点)

  1. 企業規模要件(従業員51人以上)…撤廃方向
  2. 賃金要件(月8.8万円以上) ……… 撤廃方向※1
  3. 労働時間要件(週20時間以上)……見直しなし
  4. 学生除外要件………………………… 見直しなし
  5. 非適用業種(従業員5人以上)…… 解消方向
         (従業員5人未満)…… 見直しなし※2 

※1 撤廃時期は、最低賃金の動向を踏まえ配慮
※2 将来的には解消すべきとの意見あり

社会保険の適用拡大は、年収の壁問題と合わせてニュースで取り上げられる機会が増えたため、耳にされた方も多いのではないでしょうか。
特に従業員50人以下の会社や、小売業等多くのパート社員を抱える会社、飲食業等非適用業種の会社では影響が大きいため、該当会社の経営層や人事担当者の方の関心は高いと感じています。
上述の方向性は決定事項ではありませんが、社会保障審議会で昨年末までに議論されたものであり、今後の動向をみる上では目安になると考えます。

本件の議論にあたっては、公正・公平の観点から働き方に中立的な制度とするべく、会社の業種や規模、従業員の働き方によって社会保険の被保険者となるか否かが決まるといった不合理の解消を目指して検討されています。
又、他の法令(雇用保険の労働時間要件は2028/10より週10時間以上)との比較や、最低賃金の上昇、3号被保険者の就業調整といった問題も加味して検討されました。

今回出された方向性として、会社に特に影響が大きいと考えられるのは、「1.企業規模要件の撤廃」と「5.非適用業種(従業員5人以上)の解消」と考えます。
「1」の企業規模要件については、もともと中小企業の経過措置としての設けられていたものであるため、次第に要件が厳しくなっていく傾向にありました。今回の案の中でも、直ちに撤廃するのではなく、従業員数20人規模で区切る等の方法が例示されていたため、今後の動向を注視する必要があります。
「5」については、これまで非適用業種であった農業・飲食業・宿泊業・理美容業等(法人を除く)で従業員が5人以上の会社が新たに対象とされています。よって短時間勤務の従業員だけでなく、フルタイムの従業員も適用対象となることから、実際に改正された場合には影響が大きいと考えられます。

本件は方向性を議論している中での途中経過ではありますが、特に「1」・「5」に該当する場合は会社の負担が大きい可能性があるため、一度現状の従業員データからシミュレーションして影響額を確認し、経営に与えるインパクトを確認することをお勧めします。
シミュレーション方法等でご不明点がありましたら、社労士にご相談ください。