全日本トラック協会(全ト協)は、会員企業に実施した「働き方改革モニタリング調査(2023/10現在)」の結果を公表しました。
調査によると、時間外労働が年960時間を超える運転者がいると回答した事業者は25.9%(前年同期△3.2ポイント)で、全ト協が23年度までの達成目標として設定していた「10%以下」とは乖離があります。
全ト協は時間外労働の削減が進まない背景を低賃金に起因する人手不足があるとみており、賃上げを実現して人手を確保するため、国土交通省が告示している「標準的な運賃」の適用を推進するとしています。
また同調査では、標準的な運賃の運用状況についても聞いており、自社に適した標準的な運賃を運輸局に届け出ている会員企業は全体の9割を占めたのに対し、届け出た運賃を適用している荷主が「ある」企業は22.3%に過ぎないとの結果がでています。
全ト協では働き方改革関連法が成立した2018年に「トラック運送業界の働き方改革実現に向けたアクションプラン」を策定し、トラック運送業界に時間外労働規制(年960時間)が適用される2024年に向けて、時間外労働削減を目指してきました。今回の調査年はアクションプラン5年目にあたり「時間外労働規制超」の人がいる企業を10%以下とすることを目指していましたが、達成とはならなかったようです。来年の調査では時間外労働規制適用初年度の結果が出るため、目標の0%に向けて更なる努力が必要となります。
全ト協で分析されているとおり、時間外労働削減には運送の担い手を確保し、業務を分担することが効果的です。しかしながら近年は売り手市場で採用が難しく、人材を確保するには賃金等労働条件を改善し、他業界と遜色ない水準とする必要があります。賃金アップの原資の捻出には、業務効率化等のコストダウンも重要ですが、最終的には売上である荷主への、適正な賃金アップ分の価格転嫁が必要でしょう。
国交省でも2020年より荷主との運賃交渉に臨むにあたっての参考指標として「標準的な運賃」の告示(直近は2024/3/22)をおこなっており、これをもとに届出・活用することで適正な価格転嫁を進めるよう促しています。しかしながら、今回の全ト協の調査結果をみると、現状荷主への価格転嫁に至っているとまではいえないようです。
2024/4に改正された、改善基準告示に関する記事はこちらをご参照ください。