令和5年度「過労死等の労災補償状況」②-厚労省

2024年7月

厚労省は、令和5年度「過労死等の労災補償状況」について公表しました。
うち、「精神障害に関する事案の労災補償状況」の概要は以下のとおりです。

先日の弊所記事[令和5年度「過労死等の労災補償状況」①]の続きです。
今回は「精神障害に関する事案の労災補償状況」についてコメントします。

令和5年度の精神障害に関する事案の労災請求件数は3,575件で、対前年大幅増の+892件(前年比+33.2%)となっています。これに伴い、支給決定件数も対前年+173件(前年比24.4%)となっています。
本資料は数値集計結果のみなので、要因については推測となりますが、おそらく2023年9月に労災認定基準が改正(①業務による心理的負荷(ストレス)評価表の「具体的出来事」にカスハラや危険性が高い業務に従事したことを追加②精神障害の悪化の業務起因性が認められる範囲の見直し 等)されたことにより、労災認定のハードルが下がったことが一因と考えられます。

業種別の請求・決定件数は、前年に引き続き、上から「医療・福祉」、「製造業」、「卸売業・小売業」の順になっています。

出来事別支給決定件数は、パワハラが依然としてトップの要因となっています。
また、近年上位3要因となっていなかったセクハラが、103件(前年+37件)と大きく増加していることも特筆すべきことといえます。
これらのハラスメント防止に関しては、法令上も事業主に①ハラスメントを受けたと申し出た労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備②その他の雇用管理上必要な措置③当該労働者等への不利益取扱の禁止 といった義務がありますので、対応が必要です。