厚労省は、令和5年度「過労死等の労災補償状況」について公表しました。
うち、「脳・心臓疾患の労災補償状況」の概要は以下のとおりです。
令和5年度の脳・心疾患にかかる労災請求件数は1023件で、対前年大幅増の+220件(前年比+27.4%)となっています。これは直近5年間で最大の請求件数です(本年度を除く直近5年の最多は令和元年で936件)。これに伴い、支給決定件数も対前年+22件(前年比11.3%)となっています。
労災請求の業種別件数は、「運輸業・郵政業」がトップであり、これは長らく変わっていません。特に貨物運送業において、脳・心疾患で回避行動がとれなくなったことによって、重大事故につながりやすいことが一因と考えられます。そのため国交省からも「自動車運送事業者における脳血管疾患対策ガイドライン」が公表される等、脳血管疾患についての理解や、事業主によるの脳検診等の重要性を喚起しています。
また、脳・心疾患については、長時間労働との因果関係があることが、この調査結果からも見てとれます。
労災認定における業務の過重性評価の1つである「長期間の過重業務」に関する労災認定基準は、以前は、①発症前1ヶ月で100時間の時間外労働、又は②発症前2か月間ないし6か月間にわたって80時間/1ヶ月を超える時間外労働 が基準となっていましたが、現在はこの時間に満たなくても「これに近い時間」の時間外労働で「労働時間以外の負荷要因」※があれば、業務との関連性が強いと判断されるものとなっています。
※ 労働時間以外の不可要因の例としては、拘束時間の長い勤務や休日のない連続勤務(=勤務時間の不規則性)、出張の多い業務(事業場外における移動を伴う業務)、心理的負荷・身体的負荷を伴う業務が挙げられます。