トラック業界の2024年問題と改善基準告示

ニュース&法改正

1.改善基準告示とは?

改善基準告示とは、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(厚生労働大臣告示)のことで、トラック等の自動車運転者について、労働時間等の労働条件の向上を図るため拘束時間の上限、休息期間についての基準等が設けられています。
改善基準告示は、法定労働時間の段階的な短縮を踏まえて見直しが行われた平成9年以降、改正は行われていませんでしたが、働き方改革関連法を踏まえて令和4年12月に拘束時間の上限や休息期間等が改正されました。
施行日は令和6年4月1日です。

2.トラック業界の2024年問題とは?

2024年3月で働き方改革関連法の猶予期間が終了し、2024年4月より改正改善基準告示が適用となったことを受けて、労働時間短縮にともなう輸送能力の不足が問題となっています。
何も対策をしなかった場合の輸送能力の不足は、2019年に比べ、2024年度で14.2%不足、2030年度には34.1%不足と試算されています。
改善策として、荷待ち時間・待機時間の短縮やリードタイムの延長等努力はなされていますが、ドライバーの高齢化や採用難、またeコマースを背景とした物流需要の増加等の問題もあり、業界内の努力だけでは依然として厳しい状況が続いています。
※出典:国交省「持続可能な物流の実現に向けた検討会 最終取りまとめ」

3.改正改善基準告示のポイント

改善基準告示の主要な内容は以下のとおりです。

(1) 拘束時間

拘束時間とは、労働時間と休憩時間(仮眠時間を含む)の合計時間、つまり始業時刻から終業時刻までの、事業主に拘束される全ての時間をいいます。

① 1年、1ヶ月の拘束時間

1年 : 改正前3,516時間以内 → 改正後3,300時間以内
1ヶ月: 改正前 293時間以内 → 改正後 284時間以内

例外

労使協定により、以下を満たすことを条件に1年3,400時間、1ヶ月310時間(年6回まで)を限度に延長することができます。

  • 1ヶ月の拘束時間が284時間を超える月は連続3ヶ月までとする
  • 1ヶ月の時間外労働及び休日労働の合計時間数が100時間未満となるよう努める

② 1日の拘束時間

原則    :13時間以内(改正なし)
延長する場合:改正前16時間以内 → 改正後15時間以内(14時間超は1週について2回までが目安)

なお、長距離貨物運送の場合、運行の中継地や目的地において休息期間を過ごすことがありますが、休息期間の配分においてはトラック運転者の疲労の蓄積を防ぐ観点から、当該トラック運転者の住所地における休息期間が、それ以外の場所における休息期間よりも長く確保されるよう努める必要があります。

例外

宿泊を伴う長距離貨物運送(事業場出発から事業場帰着までが450km以上)の場合は、1週について2回に限り、1日の拘束時間を16時間まで延長することができます。

1日の拘束時間の計算方法

1日の拘束時間が改善基準告示を満たしているかどうかは、始業時刻から起算した24時間の拘束時間により判断します。

出典:厚労省「トラック運転者の労働時間等の改善基準のポイント」

① は月曜日の始業時刻8時からの24時間の間に、火曜日の6時~8時の2時間も含まれるため、月曜日の1日の拘束時間のカウントは月曜日の13時間+火曜日の2時間=15時間となります。

② は、火曜日の始業時刻6時からの24時間でカウントするため、①でカウントした6時~8時についても再度カウントし、13時間となります。

(2) 1日の休息時間

改正前 継続8時間以上 → 改正後 継続11時間以上を基本とし、継続9時間を下回らないこと

例外

宿泊を伴う長距離貨物運送の場合、1週について2回に限り継続8時間以上とすることができます。
ただし 休息期間のいずれかが継続 9 時間を下回る場合は、運行終了後に継続 12 時間以上の休息期間を付与する必要があります。

分割取得の特例

業務の必要上、勤務終了後継続9時間以上の休息期間を与えることが困難な場合、以下の要件を満たすものに限り、当分の間、一定期間(1か月程度を限度とする。)における全勤務回数の1/2を限度に、休息期間を拘束時間の途中及び拘束時間の経過直後に分割して与えることができます。

  • 分割された休息期間は1回当たり継続3時間以上とし、2分割又は3分割とする
  • 1日において、2分割の場合は合計10時間以上、3分割の場合は合計12時間以上の休息期間を与える

なお、休息期間を3分割する日が連続しないよう努める必要があります。

※青字は今回改正部分

(3) 運転時間

2日平均1日:9時間以内   2週平均1週:44時間以内(改正なし)

2日平均1日の運転時間の計算方法

特定日(4月2日=A)の運転時間を判定する場合、4月1日(B)と4月3日(C)の両方の平均が計算対象となり、両方の・・・運転時間の平均が9時間を超えた場合に改善基準告示違反となります。
上図のケースでは、AB平均=9.5時間、AC平均9時間であるため、違反ではありません。

2週平均1週の運転時間の計算方法

起算日から2週ごとに区切り、その2週ごとに計算します。上図では44時間を超えているため改善基準告示違反です。

(4) 連続運転時間

原則:

  • 4時間以内
  • 運転開始後4時間以内又は経過直後に、30分以上の運転の中断が必要で、中断は原則休憩となります。
  • 運転の中断は、1回がおおむね連続10分以上とした上で分割することもできます。ただし1回が10分未満の運転の中断は、3回以上連続することは認められません。

   ※青字は今回改正部分

例外

サービスエリア又はパーキングエリア等が満車である等により駐車又は停車できず、やむを得ない場合には、4時間30分まで延長することができます。

(5) 予期し得ない事象

トラック運転者が、災害や事故等の通常予期し得ない事象に遭遇し、運行が遅延した場合、1日の拘束時間、運転時間(2日平均)、連続運転時間から、予期し得ない事象への対応時間を除くことができます。(今回新規追加)
1か月の拘束時間等の他の規定からは、予期し得ない事象への対応時間を除くことはできません

この場合、勤務終了後、通常どおりの休息期間(継続11時間以上与えるよう努めることを基本とし、継続9時間を下回らない)を与えることが必要です。

予期し得ない事象への対応時間

以下の2つの要件を満たすものをいいます。

① 運行遅延の原因が以下のいずれかに当てはまるもの
車両故障、フェリーの欠航、災害・事故による道路封鎖や渋滞、異常気象による運航困難

② 客観的な記録により確認できる時間であること。
業務日報の記録※1+予期し得ない事象の発生を特定できる客観的な資料※2
※1 対応場所や対応時間、予期できない事象の事由が確認できること
※2 例えば以下が考えられます
  ・修理会社等が発行する故障車両の修理明細書等
  ・フェリー運航会社等のホームページに掲載されたフェリー欠航情報の写し
  ・日本道路交通情報センター等のホームページに掲載された道路交通情報の写し(渋滞の日時・原因を特定できるもの)
  ・気象庁のホームページ等に掲載された異常気象等に関する気象情報等の写し

(6) 休日の取扱い

休日とは、休息期間に24時間を加算して得た連続した時間をいいます。(改正なし)
よって通常勤務の場合の休日は、継続33時間(9時間+24時間)を下回らないようにする必要があります。
なお、休息時間+24時間<30時間となる場合は、休日は30時間とする必要がありますので注意が必要です。
(30時間を下回ることはできません)
※ 休息を分割付与した場合等