昨日の記事でご紹介した厚労省の通知(令和6年1月12日、基発0112第1号「時間外・休日労働協定の適正化に係る指導について」)の続きです。
この通知によると、「過半数代表者」の適合性を、36協定届の確認事項の1つとして挙げています。
過半数労働組合(事業場の従業員の過半数が加入している労働組合)がない場合、労使協定等で従業員側の締結当事者となる「過半数代表者」の選出には、以下の要件があります。
※過半数労働組合がある場合は、従業員側の協定等締結当事者は、過半数労働組合です。
これらはいずれも使用者の意向を排除し、また従業員側で一定の納得感をもち、皆の意見を代表する者であることを担保するために定められたものです。
①では、取締役等の経営層や、経営層に近い地位にいる管理監督者を排除し、従業員側の利益を守る人から代表者を選出することを要件としています。
②では、「何の件に関しての、従業員の意見を代表する者なのか」を示して選出することを要件としています。具体的には「36協定の締結に関して」や「就業規則改定の意見聴取に関して」といった内容を明示して選出します。
③では、挙手や投票といった民主的な方法で選出された代表者であることを要件としています。
過半数代表者の選出で上述の要件を満たせない場合は、締結した労使協定等の効力が否定されることにつながります。例えば36協定の効力が否定されると、従業員に時間外労働や休日労働を適法におこなせることができなくなり、労基法上も「6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金」という罰則を受ける可能性があります。この罰則は企業だけでなく労務管理責任者にも適用されることがあります。また、労基署により送検事例として企業名が公表されることもあるため、会社の信頼を低下させるおそれがあることも認識しておく必要があります。
管理監督者が適正に選出されているかは、今回の厚労省の通知によるチェックだけでなく、労基署の調査においても、確認されるポイントの1つとなります。
これらに対応するためにも、特に②③については書面等で証跡を残すよう、フローを確立しておく必要があります。
重要な手続きとなりますので、過半数代表者の選出フローに関しては是非社労士にご相談ください。