選択的夫婦別性への提言-経団連

2024年6月

経団連は、現在の日本の制度である「夫婦同氏制度」を女性活躍を阻害する社会制度の1つであるとし、一人ひとりの選択肢を増やすためにも「選択的夫婦別姓制度」を早期に実現すべきと提言しました。
現行法では、婚姻時に夫婦の旧姓のいずれかを選択して新姓とするとなっているものの、実態としては95%が夫の姓を選択しているとのことです。このことは、女性のキャリアの分断につながるだけでなく、旧姓をビジネスネームとして使用した場合にも様々な弊害(旧姓での銀行等口座開設不可、海外渡航時にパスポートとビジネスネームが異なることでの証明等の困難さ)を生むとして早期対応を求めています。

「選択的夫婦別性」の問題は、近年女性の社会進出が進んだことで一層注目されている論点です。
ビジネスの場を考えると、私の周りでも特に「自分の名前を前面に出して仕事をしている人」、例えば研究者や自分の名前で記事を書く記者等を中心に、何らかの影響があると考えている人が多いように感じます。彼女たちにしてみるとビジネス上「自分の氏名 ≒ 個人としての会社の名称」であるため、半強制的に屋号を変更しなければならないというのは、これまで自分の名前で築いてきたブランドを手放すのに等しく、受け入れ難いと感じるのも無理はないと思います。

一方で、姓をどうするかはビジネス上の都合だけで決めるものでもないと私は考えます。
海外の標準が夫婦同姓ではないとしても「日本における伝統的な考え方(戸籍制度、「家」の考え方)を捨てるべきではない」とする人もいれば、「姓は人格そのものであり、改姓はアイデンティティの喪失だ」という人もいるでしょう。
どちらの考え方が正しい・間違っているではないため、賛否が割れるのは必定です。
全員の納得する結論を得るのは不可能な議題ではありますが、一定の見解を出すためにも、一部の人だけでなく、国民全体での議論等がされるといいなと感じています。
何百年も続いてきた「家」の考え方にもかかわる問題だけに、現時点の「スポット」で判断することの危険性もあると考えます。せめて、今現在大人である私たちだけでなく、これからの世代である若者や子どもたちの意見も対等に尊重する方法であることを望みます。