懲戒免職となった公務員の退職金不支給-最高裁判決

2024年6月

酒気帯び運転で物損事故を起こして懲戒免職となった市職員(公務員)が、市のおこなった退職金全額不支給の処分について、取消しを求めた事案の最高裁判決です(令和6年6月27日 第一小法廷判決)。
最高裁は、全額不支給を違法とした原審(大阪高裁)を破棄し、市のおこなった処分は違法とはいえないとしました。懲戒免職処分を受けた退職者の退職金を支給するか否か、支給するとしてもどの程度支給するかは退職手当管理機関(本件では市長)の裁量の範囲であるため、「その判断は、それが社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したと認められる場合に、違法となるものというべき」としています。本件では飲酒運転の態様の悪質さや、事故後の対応も不誠実であり、住民の信頼を大きく損なうものであることが明らかとして裁量権の逸脱や濫用があったとはいえないとしています。

公務員の退職金不支給に関する最高裁判決は昨年もあり(令和5年6月27日第三小法廷判決)、今回も考え方としては共通している部分が多いといえます。2つの判決を見ると、「公務員」に関しては、市長等の退職手当管理機関に裁量権があり、その裁量権の逸脱や濫用がない限りは違法とはいえないという考え方をとっています。

一方で「民間の企業」に関しては、一般的に退職金が給与の後払い的な性格をもつこともあり、退職者の永年の勤続の功を抹消するほどの事情があったのかが問題となるため、退職金全額・・不支給が裁判上認められるケースはかなり限定されています。
(なお今回の最高裁判決では、反対意見で、退職金が給与の後払い的な性格や生活保障的な性格を持つことに触れられています)

今回の判決を参照される際には、前提とされる「官」・「民」の違いに留意することが必要です。
判決の全文はこちらをご参照ください。